季節の口福和菓子
第二十六回「亀屋良長・福梅」
 

清らかな甘さで新年を寿ぐ、
冬の京に咲く華やぎの福梅。
まぁるい色香を召し上がれ。

     
  吉村

このお菓子は福梅といいます。
正月の梅を模したものです。
白あんをやわらかな求肥で包み、
焼ゴテ(梅枝)で、形をつけて…。

  小僧

これは古くからあるお菓子ですか。

  吉村

そうですね。
正月〜2月、必ず出てくる定番のお菓子です。

  小僧

色と形が、上品で、ふんわりした、いいお菓子ですね。
いま以上に手を加えられない造形というか、
みごとに完成されている気がします。

  吉村

最初に作った人は、
いろいろ試行錯誤したと思うんですが、
ほんとうに美しい形をしています。
良いお菓子というのは、誰でもつくれるものですが、
最初につくった人が一番偉いと
つくづく思います(笑)。

     
     
     
  小僧

こういう伝統のお菓子をつくるときは、
なにか文献みたいなものを参考にするんですか?

  吉村

うちには江戸時代以降の和菓子見本帖があります。

  小僧

これを見たら、だいたいどんなお菓子かわかりますか?

  吉村

はい、わかります。
次回で紹介する元パティシエの女性が
縁があってうちで働くようになり、
大丸京都店でイベントをやったのですが
この和菓子見本帖を参考にして、
彼女なりのアレンジで新しいお菓子を出しました。

     
     
  小僧

この見本帖は、どこのお菓子屋さんにも
あるものではないですよね。

  吉村

よその店のことはわからないですが、
かなり貴重なものだと思います。
一番古い江戸時代の見本帖には、
棹ものがたくさん残っていますから、
生菓子より日持ちのするものをつくっていたんでしょうね。

 

大丸京都店のイベントで選んだもののひとつがこちらです。
ただ、最初、この字が読めなかった。
これは「袖かくし」と書いてあるらしいです(笑)。

  小僧

らしい…って(笑)。

     
  吉村

調べてみると、これは椿の品種のことで、
椿があまりにも美しいことから、
そっと隠してもって帰りたい!
それで「袖かくし」という名がついたそうです。

  小僧

へえ〜〜〜!
教養がないとまったくわかりません。とほほ
昔の人はそういうことを全部理解してたんですか。

  吉村

さあ、どうでしょう(笑)。
椿の赤の花びら、黄色のめしべ、冬の白。
いかにも凛とした冬の配色が美しい。


■亀屋良長専務・吉村良和さん

     
     
     
  小僧

お菓子の形の話に戻りますが、
この福梅は全体的に丸いですね。

  吉村

生菓子の形は、
なるべく丸みをいかすというか、
あまり手を加えて形づくらないほうがいい。

  小僧

あえて具象化しない?

  吉村

それもありますが、生地の質感を生かす。
お菓子本来の良さを引き出してあげる、
そんな作り方がおもしろい。
作為的にならないように注意しています。

  小僧

たしかに福梅は、ほとんど丸ですもんね。
リアルな形というより、抽象的にすればするほど、
お菓子を見た人が、その銘を読んで、想像して、
福々しい色香のなかに、清冽な冬に咲く、
あでやかな梅花を、より強く感じるわけで…。

  吉村

形ではなく、よく見たら、この焼印はたしかに梅だと。
福梅ひとつで、梅の形や樹の枝ぶり、
梅から受けるイメージを完結させています。

     
 

★醒ヶ井水(さめがいみず)について

   

亀屋良長初代店主は店を構える際、
和菓子つくりには欠かせない
良質の水を求めてこの地に創業したという。
昭和37年に阪急地下鉄工事の影響で一旦枯れたが、
平成3年新社屋新築の折りに井戸を掘り直す。
再びこんこんと湧きでた京の銘水を
「醒ヶ井」と名付けて菓子つくりに用いている。

     
     
     
     
     

店舗情報

亀屋良長
京都市下京区四条通堀川東入ル醒ヶ井角
電話=075−221−2005
営業時間=9:00〜18:00
定休日=年中無休
     

第二十七回「豆政・夷川五色豆」につづく

     
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