季節の口福和菓子
 

レモンうるわし、レースかん。

     
  小僧

「レース羹(かん)」は、どんなお菓子ですか?

  芝田

古くからうちにあるお菓子でして、
昭和のはじめって聞いてます。
レモンというと、だいたい外国のもので、
当時はどこもあまり使ってなかったのを、
先代がハイカラ好みでレモンのお菓子をつくろうと。

 

羊羹に入れて輪切りにしてみたら、きれいに柄がでる。
それがなんやレースのように見えたんでしょうね。
レースという言葉も、ハイカラやったんやと思います。

 

レースのような美しい羊羹で、レースかん。

 

レモンリキュールを入れて、輪切りを浮かべる。
レモンの酸が寒天と一緒になると、蜜がでてくるんです。
酸味と蜜の甘みのバランスが難しいらしいのですが、
そのへんは長いことやってますので(笑)。

 

ほんのり甘い夏のお菓子ですから、
冷やして生菓子のようにも使えますし、
お香茶にも合いますね。

 

玉子と砂糖を、たっぷり使う。
黄金深色・滋養豊富の春庭良・かすてら。

     
  小僧

有名な漢字の「春庭良」は、いつ頃できたんですか?

  芝田

明治の頃のお菓子ですが、
大正時代まではカステイラとカタカナにしてたんです。
先代が和菓子っぽい漢字をあてて「春庭良」としたそうです。
主人は大和言葉のようで美しいと言うてます(笑)。

  小僧

包装紙もしゃれたデザインですね。

  芝田

昔のものをひっぱりだして使こてみたら、
若い方が「カッコいい! かわいい♪」と言うてくれはるので(笑)。
何してもカワイイ言いはるでしょう。

 

大正時代に使こてた包装紙なんですが、
原画をみると当時にしては珍しい写真がはめ込んであるんです。
まだ写真の印刷技術がなかったころに、
近所の印刷屋さんが作ってくれはったんです。
ほんま、先代はハイカラなことが好きだったんで。

  小僧

では、カッコよくて、かわいい、包装紙を見てください。

黄金深色 風味淡白 老賞幼懐 滋養豊富

 

   
  小僧

こちらは元々は、カステラ屋さんですか?

  芝田

最初は和菓子屋ですが、
初代の息子が明治の初めに長崎へ修業に行って、
カステラを習うてきたんです。

  芝田

カステラは店を始めてすぐに
長崎の福砂屋さんで習ったので、京都ではカステラの先駆けですね。
昔はカステラを焼けるところがそれほどなかった。
なにしろ玉子が高級品だったんです。

 

その玉子がたくさんあったので、
カステラ生地のおまんじゅう「大極殿」をつくったら、
とても日持ちして、よく売れたんです。
そのおまんじゅうを屋号にして、
芝田商店から「大極殿本舗」になりました。

  芝田

卵を怖がらずに使ったことがよかったのでしょうか。
お砂糖も結構入れてますから、口あたりがいい。
卵もお砂糖も防腐剤の役目をするんですね。
お砂糖を減らすと日持ちがしません。
しっとりした保湿効果をだすために、
カステラの底にザラメをひいてます。

  小僧

二重三重の気配りですね。
カステラは砂糖をケチるな、と(笑)。

  芝田

ですね(笑)。

第七回「嘯月 きんとん・こぼれ萩」につづく