季節の口福和菓子
第十二回ゲスト・聚洸 高家裕典:情報を見る」
第十二回「聚洸・わらび餅」
 

芳光とは、くらべない。
これが聚洸のわらび餅。

     
  小僧

聚洸さんを代表する名菓って何ですか?

  高家

ありません!(きっぱり)。
どのお菓子も自分の思いを込めてつくってますから、
これが一番というのはないですね。
僕が名菓を決めるのではなくて、

お客様が決められるものだと思っていますし。
  小僧

ということは「おすすめはどれですか」とお聞きしたら、
「みんなおすすめです」とおっしゃる?

  高家

はい、みんなおすすめです(笑)。
全部食べていただきたいですが、それは無理なので、
よく出ているものを「このあたりが人気です」とか、
「今の季節ならこれでしょうか」とおすすめしますね。

  小僧

どのお菓子にも愛着がある?

  高家

僕にとっては、どれも同じように可愛い。
あとはお客様それぞれが判断してくださって、
好みのものを見つけていただければうれしいですね。
お茶会なら「こんなものがほしい」と言ってくれはったら、
いくらでもリクエストにおこたえしますし。
羽二重でも、わらび餅でも。

     
  小僧

お、出ました、わらび餅!

  高家

わらび餅はモノマネなんです。

  小僧

モノマネ?

  高家

修行先からの流れなんです。
僕の師匠は「芳光」といって、
わらび餅で有名な名古屋の和菓子店ですが、
そこで、初めはモノマネでもいいよ、と言われたんです。

 

うちでつくっているお菓子なら、
まったく同じものをつくってもかまへん、と。

 

実家の塩芳軒でも、息子なんやし、
つくりたいものがあったら
マネしたらええねん、と。

     
  高家

最初はモノマネでも、店をずっと続けていくと
いつのまにか「自分のお菓子」になっていく。
ほんま、不思議なもんですわ。

 

形をこうしたほうがいいかなあとか、
色をこう変えてみようと考えるじゃないですか。
すると、いつしか自分のお菓子というか、
聚洸らしいお菓子ができていくんですね。

     
  小僧

わらび餅は芳光さんを超えましたか。

  高家

芳光さんのは芳光さんので、
僕にとっては食べ慣れた味なので、
おいしいと思いますが、
比べようとは思わないですね。
ただ、うちのわらび餅は、芳光のものより、
ちょっとしっかりめなんですよ。

  小僧

それは季節によって?

  高家

いえ、季節に関係なく堅めです。
僕はもともとお茶席のお菓子をやろうと思ったわけではない。
もちろん、お茶席菓子もおもしろいんですけど、
一般の人に、おいしく、楽しく、食べていただくお菓子。
そのほうが自分には合ってるような気がします。

     
  小僧

聚洸ネーミングの由来は?

     
  高家

僕は聚楽小学校卒業なんです。
もう廃校になったんですが、
豊臣秀吉の聚楽第跡に建った小学校です。

 

で、塩芳軒の名菓になっている焼きまんじゅうの聚楽。
それは僕にとってはルーツ的な意味合いがあります。
その聚をふくめて、いくつか自分に関わりのある漢字を
晴明さんにもっていきました。

 

そのとき、晴明さんが考えてくれはった
いくつかの候補のなかに、
この「聚洸」があって、意味合いで選びました。

 

意味合いを教えてもらうと
聚洸のは集まる、は光る。
さんずいがつく光るは、
水が珠になって光り輝いている状態のことであると。

 
  高家

つなげた意味としては、
自分が学んできた、ひとすじの小川が、大河となって、
やがて、大きくはじけて光り跳ぶ…。
きれいだなと思ったんです。

 

学んできたものが、結晶となって、
美しくはじけて、
ひとつひとつのお菓子として、
光り輝くものであったらいいなと。
聚洸にはそんな思いが込められています。

     

第十三回「京華堂利保・薯蕷(じょうよ)まんじゅう」につづく