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第7回 伝統の手仕事を受け継ぐ者たち。

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吉岡幸雄プロフィール
第7回 伝統の手仕事を受け継ぐ者たち。

吉岡幸雄氏 写真

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小僧

染師の人も含めてですが、
伝統的な手仕事をする職人が減ってますね。


吉岡

確かに減っている。
和紙をすく人は一年のうち半分休まないといけなかったり、
仕事が厳しく、あるいは注文がへって
廃業する人だって、ものすごく多いんです。


小僧

京都府でも少ないですか。


吉岡

紙すきは、京都は2軒だけですよ。
綾部市黒谷と宮津市大江というところに2軒だけ。


小僧

それは「すき手がいない」からですか。


吉岡

そういう理由もあるけど、
みんなが和紙を使わないことやね。
 
ふすまや障子を張り替えるときに、
機械ですいたような、
ビニールの入った破れない障子を使うやろ。
破れない障子って、おかしいでしょう。


小僧

たしかに。


吉岡

そんなの使っていたら呼吸できなくなって、
なんとなく調子悪くなったりするやろ。
昔は家のあちこちに紙を張ったもんや。
僕はどこにでも「手すき和紙」を使うようにしている。

 

小僧

(家を見回して)はい、あそこにも、ここにも!


吉岡

声を大にして言いたいことがあるんや。


小僧

大にして、どうぞ!


吉岡

モノの価値基準が安いか高いかになっている。
僕が和紙で作った名刺を差し上げると、
これは高いでしょう!と言う。
そういうことを臆面もなく口にする。
極めて貧困な文化だと思うんや。

小僧

そうなった原因のひとつに、
人間と自然の関わりが極端に
薄れてしまったというのもありますか。


吉岡

お、珍しくええこというね(笑)。
人間だって自然の生き物なわけだから、
自然に学んで、手を動かして、頭を使わなければね。

 

小僧

はい。


吉岡

われわれの仕事は植物を扱うから、
自然からいろんなことを学ぶ。
平安時代の和歌でもそうやけど、
自然が美しいから歌を詠もうとして
脳が鍛えられるわけでしょう。

 

それと同じように和紙屋さんも、染師も、他の職人も、
みんな手を動かして、工夫に工夫を重ねて、
いい仕事をしようと考え抜いているわけです。

 

何でもかんでも植物を煮たら、

いい色が採れるんではなくて、
自然をよく観察して、何回も実験して、手を動かして、
いいものだけを抽出している。
自然に聞きながら謙虚に仕事をしてきたんや。

 

小僧

つねに謙虚に。


吉岡

ところが、産業革命以後は、
材料があるないに関わらず、まず機械ありきで、
ほんで材料がなかったら外国に攻めこんで、
奪い取ってくるようになってしまった。

 

コットンがいい例で、
木綿を機械で紡いだのがイギリス産業革命の始まりだけど、
イギリスなんて寒い国で、木綿なんてひとつもできない。
全部外国から奪い取るようにしてやった。

 

もっと作れ、もっと作れと。
アメリカ南部の綿摘み奴隷とか、
そういう悲劇が起こっても気にもしない。
機械化によって悲惨なことが次々と起きる。

 

現代でも根っこは同じや。
考えもなしにひたすら量産する。
とりあえず儲けるという考え方がはびこっている。

 

それはなぜかというと、すべて極端な機械化。
手仕事だったら、ちょっと足らないから休めばいいけど、
機械は休ませられないから、どんどんものを作る。


そうすると今度はコストダウンといって、
低開発国にみんな負担がいく。

 

こういうおかしな循環になってきていることが
もうダメなんだけれども、
そんなことを僕が言ったって誰も聞いてくれないから、
われわれは染師は、ひたすら手が大事だと思って、
コツコツ地道に手仕事に邁進しているわけや。

 

小僧

ふぁいと♪


吉岡

日本というのは、
まだ完璧な革命が起きない国なんですよ。

 

小僧

ああ、なるほど。残ってますものね。

 

吉岡

日本は明治時代に化学染料になったけど、
日本古来の伝統は、ちょっと残った。
欧米は、もう全部ない。まるごと消えた。

 

彼らに植物染めなんか見せたら、
何してんのん?というようなもんやね。
もう伝統の技が完全に途絶えている。

 

その点、日本は少しは流れているわけや。
文明開化というダムでせき止められたけど、
ちょろちょろとした流れが残っている。

 

僕はそういう小さな流れでも、
いま見てもらわないと危機が来ると思う。
ウチなんか伝統の絶滅危惧種や。

 

小僧

絶やしてはいけないですね。

 

吉岡

あかんと思いますよ。
そのためには大変な努力をしなきゃいけない。

 

小僧

物事をはじめることを、手を染めると言います。
手仕事というのは、まさしく自分の手を染めて染めて、
後世に残し伝えていくために、
あきらめないでやっていくしかないんですね。

 

吉岡

そやね。
手を染めて動かして…手仕事。

 

お母さんが夜なべをしてという歌があるやろ。
いま、お母さんに徹夜して洋服を縫ってくれとは言わんけど、
手を使ってモノを作ることをしなくなったら、
あほな人間ばかりが増えていくと思いますよ。

 

小僧

弱ったもんですね。

 

吉岡

自分たちのものは、自分たちである程度作るとか、
自分ができることは自分でするという思想を
もう一回きちんと見つめ直さないとね。

 

小僧

はい。

 

吉岡

昔は四里四方のものを食べろと言った。
住んでいる近くでとれた旬のものを食べる。
ほんとうの意味での地産地消やね。

 

今は宅急便で北海道から新鮮な海産物が翌日届くし、
外国のどこで作ったかわからんような野菜が来るわ、
別にそれが全部悪いとは思わないけれど、
それをしたら人間というのは、
どこかがダメになって、やがて脳が衰えていく。

 

小僧

脳が衰えると同時に、
自然を見る力がなくなっていく。

 

吉岡

そや。

 

小僧

それで町の景観を平気で駄目にしてしまうと。

 

吉岡

どんどん無神経になっていくわけや。

 

自然に強く関わる仕事をしていると、
不思議なものでいろんなことが見えてくる。

 

 

ものづくりでも、われわれのような
伝統工芸だけがいいとは思っていない。
伝統工芸といっても、どこから始まったか
わからないものがいっぱいあるわけだからね。

 

古くからあるものすべてが伝統とは思わないけど、
自分らが勝手なことばかりやったらあかんのですわ。
いつも、謙虚に、自然の声をよく聞いて、
四季の流れに逆らわないようにせんとね。

 

小僧

不自然なことはダメですね。

 

吉岡

自然ときちんと向き合い、
自然をしっかり見つめることが大切やね。

 

小僧

染色家は、一流の自然観察者でもあるわけですね。

 

 

吉岡

あんた、ええこと言うな〜♪

 

 
 

背景データ協力/紫紅社 

http://www.artbooks-shikosha.com/index.html

つづく 第8回「京都の色、冬の色味」
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第一話 京都は汚れている<目次>
第二話 季節の色を感じて、まとって、歌にして<目次>
第三話「自然が名づけた、美しい色の名前たち。」
第四回「色の最高位は、源氏物語の紫」
第五回「伊吹山の刈安、インドの茜」
第六回「伊吹山の刈安、インドの茜」
第七回「伝統の手仕事を受け継ぐ者たち。」
第八回「京都の色、冬の色味。」
 

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