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第7回 伝統の手仕事を受け継ぐ者たち。

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吉岡幸雄プロフィール
第7回 伝統の手仕事を受け継ぐ者たち。

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小僧

京都の冬の色というと、
やはり無彩色でしょうか。


吉岡

京都の冬は白やな。薄墨から白。
冬になると色は減るけど、僕は京都の冬が好きでね。
鴨川の丸太橋の真ん中に立つと、
北山がぼぅ〜と重なって見えるんです。

 

それがええ感じの薄墨色というか、
胡粉と墨を混ぜてかけたような、
なんか切ないような情景になっている。
川べりに冬鳥が羽を休めてたりしてて…。


小僧

すごく寒そうですが、
冬の京都はいいですか。


吉岡

京都には12月〜2月においでなさい。
観光客も少ないし、冬は食べ物がおいしい。
大根とか、水菜とか、九条ネギとか、
冬の京野菜を食べに。

とくに淀大根や聖護院かぶら。


伏見のこのへんは昔は巨椋池(おぐらいけ)の一角だった。
干拓して大根を植えたら、土がいいから、

ものすごくよく育つ。
大根を作っている農家に行って、抜きたてを分けてもらう。

 

ナマでかじると、そりゃ、おいしい!


小僧

くわーーーーー!


吉岡

冬野菜もいいけど、あと、いいのは松やな。


小僧

松? おいしいですか?


吉岡

あほな。
歳寒三友という言葉があるやろ。

 

小僧

はてな?


吉岡

昔の人は、身の回りにある
自然の色を友達だと思ってたんやな。
でも冬になるとそうした色がすべて消えてしまう。
友達がいなくて寂しいと嘆くわけや。


小僧

はあ…。


吉岡

だけど冬でも三つの友がおる。それが松竹梅なんや。
松は、常磐(ときわ)色といって、緑が一年中美しい。
竹も、冬にきれい色を見せるやろ。
梅は、雪が降っても可憐に咲く。


小僧

あ、なるほど!
冬の松竹梅=歳寒三友ですね。


吉岡

色が消えてしまう1月〜2月、
ことのほか、きれいに見える松竹梅が
おめでたいものの象徴になったんやね。

 

小僧

はい、勉強になります。


吉岡

京都は冬は冬で大いに楽しめる。
寒いからこそ食べ物も美味しい。
京都の良さは冬にわかる。

 

小僧

京都を象徴する色というのはありますか。


吉岡

やはり紫やね。
枕草子の「春はあけぼの」「紫だちたる雲」

というのがあるけど、 あれに尽きるね。

 

朝早くに比叡山を見ると、山全体が紫に見える。
琵琶湖の向こうから陽が上がってくる。
京都盆地には、まだ陽が差さない。
そんなときから日が来るまでの間、
鷹峯辺りから比叡山を見ていてごらん。
ほんま美しい紫や。

 

小僧

未明の紫ですか。


吉岡

そう、明け方だけの紫。
紫雲が来るというのは吉兆の証しや。
そこに神仏が降臨してくるわけやからね。

 

比叡山は京都人にとって聖なる山。
京都では東北に神棚を置いたりする。
これも比叡山に対する崇敬のひとつやな。

 

紫野って地名があるやろ、大徳寺のへんに。
あれは何で紫野というのか、わかるか?

 

小僧

はて…。

 

吉岡

ほとんどの人は染料のムラサキ草が咲いていたと言うわけや。
ところが、いろいろ調べてみると、
京都でムラサキが取れた形跡はほとんどない。

 

僕が思うに、あそこから比叡山が見える。
江月宗玩の文書を読んでいると、
紫の見える野と書いてある。

 

小僧

紫の見える野。

 

吉岡

紫に染まる比叡山が見える野=紫野。
枕草子はあのあたりで書かれたんちゃうか。
紫の見える野やで、あれは。

 

小僧

枕草子が書かれた場所ですか! 
さすが京都ですね。
いや、すごいもんですね。

 

吉岡

また、それかいな。
かたい話はこのくらいにして、お菓子を、どうぞ。

 

小僧

いただきます。

 

吉岡

これはね、うちの紅花で染めたんや。

 

吉岡

近くのお菓子屋さんに奇特な人がいてね。
やってみましょうと言うから。
和三盆の砂糖をこうして落雁にしているんだけど。

 

小僧

おいしいですね。

 

吉岡

そうか。おみやげにあげるわ。

 

小僧

ありがとうございます。
では最後にお聞きしますが、
好きなお寺とかお気に入りのお寺はありますか。

 

吉岡

たくさんありますなあ。
そうね、どこか好きと言われたら困るけど、
京都に来て1カ所だけと言うんやったら、
宇治上神社に行きなさいと言っているの。

 

なぜかというとね、
京都は1200年の都とか言ってるけど、
みんな焼けて平安時代から続いている寺社は非常に少ない。
宇治上神社は平安末期のまま残ってるんです。

 

神棚の前の高欄の形など、実に美しい。
宇治上神社で、源氏絵巻の世界を、
平安朝の優美な姿を、ぜひ見てほしいんや。

小僧

これまで意識しなかったんですが、
今回、吉岡さんに教えていただいて、
伝統色のおもしろさと奥深さが理解できたような気がします。

 

吉岡

そうか、それは良かった。
僕も日本の色を再現することで、
日本人の美意識の高さとか、
色彩感覚の豊かさを再確認できたんや。

 

四季とともに培ってきた和様の色彩には、
それぞれに意味があり、優美さがあり、歴史がある。
日本の歴史を伝統色という視点から眺めるのも楽しいものです。

 

小僧

ありがとうございました。

 

 

背景データ協力/紫紅社 

http://www.artbooks-shikosha.com/index.html

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□ INDEX
第一話 京都は汚れている<目次>
第二話 季節の色を感じて、まとって、歌にして<目次>
第三話「自然が名づけた、美しい色の名前たち。」
第四回「色の最高位は、源氏物語の紫」
第五回「伊吹山の刈安、インドの茜」
第六回「伊吹山の刈安、インドの茜」
第七回「伝統の手仕事を受け継ぐ者たち。」
第八回「京都の色、冬の色味。」
 

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