
吉岡幸雄氏のプロフィールを見る
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| 小僧 |
京都の冬の色というと、
やはり無彩色でしょうか。
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| 吉岡 |
京都の冬は白やな。薄墨から白。
冬になると色は減るけど、僕は京都の冬が好きでね。
鴨川の丸太橋の真ん中に立つと、
北山がぼぅ〜と重なって見えるんです。
それがええ感じの薄墨色というか、
胡粉と墨を混ぜてかけたような、
なんか切ないような情景になっている。
川べりに冬鳥が羽を休めてたりしてて…。
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| 小僧 |
すごく寒そうですが、
冬の京都はいいですか。
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| 吉岡 |
京都には12月〜2月においでなさい。
観光客も少ないし、冬は食べ物がおいしい。
大根とか、水菜とか、九条ネギとか、
冬の京野菜を食べに。
とくに淀大根や聖護院かぶら。
伏見のこのへんは昔は巨椋池(おぐらいけ)の一角だった。
干拓して大根を植えたら、土がいいから、
ものすごくよく育つ。
大根を作っている農家に行って、抜きたてを分けてもらう。
ナマでかじると、そりゃ、おいしい!
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| 小僧 |
くわーーーーー!
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| 吉岡 |
冬野菜もいいけど、あと、いいのは松やな。
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| 小僧 |
松? おいしいですか?
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| 吉岡 |
あほな。
歳寒三友という言葉があるやろ。
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| 小僧 |
はてな?
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| 吉岡 |
昔の人は、身の回りにある
自然の色を友達だと思ってたんやな。
でも冬になるとそうした色がすべて消えてしまう。
友達がいなくて寂しいと嘆くわけや。
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| 小僧 |
はあ…。
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| 吉岡 |
だけど冬でも三つの友がおる。それが松竹梅なんや。
松は、常磐(ときわ)色といって、緑が一年中美しい。
竹も、冬にきれい色を見せるやろ。
梅は、雪が降っても可憐に咲く。
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| 小僧 |
あ、なるほど!
冬の松竹梅=歳寒三友ですね。
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| 吉岡 |
色が消えてしまう1月〜2月、
ことのほか、きれいに見える松竹梅が
おめでたいものの象徴になったんやね。
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| 小僧 |
はい、勉強になります。
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| 吉岡 |
京都は冬は冬で大いに楽しめる。
寒いからこそ食べ物も美味しい。
京都の良さは冬にわかる。
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| 小僧 |
京都を象徴する色というのはありますか。
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| 吉岡 |
やはり紫やね。
枕草子の「春はあけぼの」「紫だちたる雲」
というのがあるけど、 あれに尽きるね。
朝早くに比叡山を見ると、山全体が紫に見える。
琵琶湖の向こうから陽が上がってくる。
京都盆地には、まだ陽が差さない。
そんなときから日が来るまでの間、
鷹峯辺りから比叡山を見ていてごらん。
ほんま美しい紫や。
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| 小僧 |
未明の紫ですか。
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| 吉岡 |
そう、明け方だけの紫。
紫雲が来るというのは吉兆の証しや。
そこに神仏が降臨してくるわけやからね。
比叡山は京都人にとって聖なる山。
京都では東北に神棚を置いたりする。
これも比叡山に対する崇敬のひとつやな。
紫野って地名があるやろ、大徳寺のへんに。
あれは何で紫野というのか、わかるか?
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| 小僧 |
はて…。
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| 吉岡 |
ほとんどの人は染料のムラサキ草が咲いていたと言うわけや。
ところが、いろいろ調べてみると、
京都でムラサキが取れた形跡はほとんどない。
僕が思うに、あそこから比叡山が見える。
江月宗玩の文書を読んでいると、
紫の見える野と書いてある。
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| 小僧 |
紫の見える野。
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| 吉岡 |
紫に染まる比叡山が見える野=紫野。
枕草子はあのあたりで書かれたんちゃうか。
紫の見える野やで、あれは。
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| 小僧 |
枕草子が書かれた場所ですか!
さすが京都ですね。
いや、すごいもんですね。
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| 吉岡 |
また、それかいな。
かたい話はこのくらいにして、お菓子を、どうぞ。
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| 小僧 |
いただきます。
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| 吉岡 |
これはね、うちの紅花で染めたんや。
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| 吉岡 |
近くのお菓子屋さんに奇特な人がいてね。
やってみましょうと言うから。
和三盆の砂糖をこうして落雁にしているんだけど。
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| 小僧 |
おいしいですね。
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| 吉岡 |
そうか。おみやげにあげるわ。
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| 小僧 |
ありがとうございます。
では最後にお聞きしますが、
好きなお寺とかお気に入りのお寺はありますか。
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| 吉岡 |
たくさんありますなあ。
そうね、どこか好きと言われたら困るけど、
京都に来て1カ所だけと言うんやったら、
宇治上神社に行きなさいと言っているの。
なぜかというとね、
京都は1200年の都とか言ってるけど、
みんな焼けて平安時代から続いている寺社は非常に少ない。
宇治上神社は平安末期のまま残ってるんです。
神棚の前の高欄の形など、実に美しい。
宇治上神社で、源氏絵巻の世界を、
平安朝の優美な姿を、ぜひ見てほしいんや。 |
| 小僧 |
これまで意識しなかったんですが、
今回、吉岡さんに教えていただいて、
伝統色のおもしろさと奥深さが理解できたような気がします。
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| 吉岡 |
そうか、それは良かった。
僕も日本の色を再現することで、
日本人の美意識の高さとか、
色彩感覚の豊かさを再確認できたんや。
四季とともに培ってきた和様の色彩には、
それぞれに意味があり、優美さがあり、歴史がある。
日本の歴史を伝統色という視点から眺めるのも楽しいものです。
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| 小僧 |
ありがとうございました。
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背景データ協力/紫紅社
http://www.artbooks-shikosha.com/index.html |
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