京の生活道具vol.12:紙 手漉きの和紙

少し前まで、和紙と聞けば、便箋のような書くためのものか、
せいぜいラッピングに使うくらいの印象しかなかったのだけど、
昔の日本人が和紙をどのように使っていたのか
ちょっと調べてみて、ほんとうにびっくりした。

防水性のある油を塗り込んで傘にしたり、
柿渋を塗り重ね、よく揉み込んで雨合羽にしたり、
切り取った和紙を糸にして織物(紙布=しふ)を作ったり、
撚(よ)った紙を編んでお盆や壺、小物入れにしたり。
もちろん、家屋には、障子や襖(ふすま)として用いていたし、
凧(たこ)揚げの凧や、張り子など、身近な玩具としても使っていた。

和紙は、非常に身近で、多様な使い方ができる生活道具だったのだ。

 

神に捧げる最高の幣

京都の街中に楽紙館(らくしかん)という店がある。

もとは着物を包む畳紙(たとうし)や値札紙などを扱う呉服店向けの
専門店だったが、今では、全国の和紙から海外の和紙まで豊富に扱う
紙専門店として事業を拡げている。

3階で扱っている和紙の種類は、なんと約1500以上。
まさに「紙の博物館」なのだけど、博物館と違うのは、
それらを触って、買うことができるということ。
私は初めて訪ねたときから、産地名が書かれたインデックスを見ながら、
「次はどんな紙だろう」と、和紙が納められた引き出しを開ける楽しみに、
すっかり魅了されてしまった。

流し漉きを何度も繰り返し、強く丈夫に作られた厚い紙。
光をあててみたときの、繊維がつくり出すやわらかな陰影。
花や水玉など、作り手が工夫を凝らして入れた透かし模様。
それぞれに美しさがあって、選びきれずに数時間を過ごすことさえある。

それに、店には、和紙で作った人形や手文庫、おもちゃ、便箋、
障子や襖の見本まで展示されていて、
私たちに生活に和紙を取り入れる様々な方法を教えてくれる。

 

楽紙館の館長、上村芳蔵(よしぞう)氏は、
「紙は、日本人の精神と深く結びついたもの」とおっしゃった。

「古代より、紙は神に捧げる最高の幣(ぬさ)とされています。
しめ縄には紙垂(しで)と呼ばれるひらひらした紙を飾りますし、
神の身代わりのお札だって、紙でできているでしょう。
だから紙は本来、使い捨てられるものではなく、
暮らしに活かしきって使われるべきものだと思います」。

 

私は今、楽紙館で求めた手漉きの和紙で、
カーテンを作っている最中だ。
住んでいるのが畳の家なので、前々から市販のカーテンが
しっくりこないと思っていた。
日本家屋といえば障子なのに、障子がない。
ならば、和紙を数枚貼り付けて、カーテンのようにしてしまおう。
それだけで、障子のように、自然のやわらかな光を入れ、
通気性も保ってくれるに違いない。

失敗したら、照明にくるっと巻いて光を演出すればいいし、
小さく切って便箋代わりにだってできるはず。
遊び心いっぱいに、もっと自由に和紙を使ってみたいと思うのだ。

 

●和紙
日本で製紙の最初の記録は7世紀(610年)。平安時代には紫や紺の染紙に金箔を施すなど装飾した紙も造られ、漆と組み合わせて器や文具などに用いる加工技術も発達した。主な原料は楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)など。紙漉きの里と言われるところでは、紙漉きは農家の冬の間の仕事として普通に行われていたものであり、庶民の暮らしのさまざまな場面で使われていた生活道具だった。
●楽紙館
オリジナルや全国の和紙を取り扱う紙の専門店。色も柄も豊富で、趣味やプレゼントまで幅広く活用できる。和紙を使った文具や小物なども多く販売されており、和紙の可能性を広げてくれる。
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楽紙館

※「京の生活道具」は今回で連載を終了します。

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