現在のお店は、三条通から高倉通を南へ進み、一筋目手前のところにある。
席数はカウンターの8席のみ。
奥の席に座らせていただき、早速料理をオーダーする。
コースや一品が用意されるメニューから、
お店の味を一通り楽しめるおすすめの点心にした。
プリフィクスコースの点心は、前菜と主菜、ご飯を数種から選べ、
名物の炭火焼や天ぷらが、主菜のメニューとして登場する。
一つの枠にとらわれず料理作りを行う中村さんの好きな言葉は、
「ソウゾウ(想像・創造)」。
店名の「なかじん」も、自分の名前の「中」と「臣」をつなげ、
“imajine(イマジン)”に掛けたものだそうだ。
今日はどんな料理を食べさせてもらえるのか、期待がふくらむ。

料理が出てくるのを待つ間、中村さんの仕事を眺めるのも、カウンター席の楽しみ。
まずは、先付の「海老とおこげのあんかけ」。

乾いてしまった酢飯の利用法を考えた結果、生まれたという一品。
かつおだしのあんが、おこげにした酢飯の酸味と思いのほかよく合う。
前菜は「珍味豆腐 三種」と「明太子と青じその生湯葉巻き」をセレクト。

彩りもきれいな珍味豆腐。

イタリアの岩塩と有機エキストラ・バージンオリーブオイルをかけたイタリア豆腐、
すりつぶした豆腐ヨウをかけた琉球豆腐、
そしてピータンの黄身を使った和風味のピータン豆腐。
同じ豆腐でも合わせるもので味わいが全然違っていて楽しい。
「明太子と青じその生湯葉巻き」。

青じその風味がアクセント。お酒が進む。
おしのぎは「枝豆と赤こんにゃくの白和え」。

なめらかでこくのある豆腐と、丹波産紫ずきん(枝豆)、近江名産の赤こんにゃく、
松の実を和えてある。まぶしてあるのは炒った自家製からすみ。
具の食感の違いも面白い。
次に出されるのが、蕎麦に代わる「なかじん」の看板メニューの「麦きり」。
全粒粉の小麦粉にデュラムセモリナ粉と中力粉を混ぜて作る。
目の前で作られた麺が…

こんなふうに。

まずは塩をつけて味わい、あとはお好みでつゆにゴマやショウガを加えても。
ところで、この麦切りをはじめ、「なかじん」の料理の名脇役となるのが、塩。
常時6〜7種類の塩を単体で使うほか、ミルで挽いたり、ブレンドしたりと、
料理によって使い分ける。
例えば、天ぷらには自家製のウニ塩が使われるが、塩ひとつとっても
中村さんの食材へのこだわりが窺える。

艶やかで弾力のある麺はのど越しよく、塩で全粒粉の風味が引き立ち、実においしい。
まるで蕎麦を食べているようだ。
しばらく余韻にひたり、お次はいよいよ、高知県物部川産のうなぎを使った
メインの「石麻呂(いわまろ)うなぎの白焼き」。
こちらの炭火焼には備長炭のみが使われる。
陶製の窯は中村さんが自ら焼いたものだ。
「炭火焼は炭の使い方、焼き方で味が違ってきます。
生の炭と消し炭を組み合わせて組んでいくんですが、窯についていなくても
火が持続するように、炭の量も計算して組みます。
焼くものによって、炭の間隔を広げたり狭めたりして火力を調節しています」。
備長炭は、個性が強く扱いが難しいが、上手に使えばとても威力を発揮するという。
こうした周到な準備から自慢の炭火焼料理ができあがる。

白ご飯と香の物、味噌汁が一緒に出される白焼き。これを塩とわさびをつけていただく。

「普通は蒸してから焼くんですが、これは焼いてから蒸しています」。
白焼きは、身がふわっとして、皮もトロトロ。
さすがは名物、これはたまらない。
「ごはんにのせて食べてもおいしいですよ」。
シメのデザートは、梅のジャムを使った「自家製シャーベット」に。
ジャムは自家製梅酒の梅で作ったものだ。

梅の爽やかな酸味と甘味が舌に心地よい。
最後にお茶をいただき、ほっこり。
中村さんのアイデアが詰まった料理の数々を堪能でき、お腹も満たされた。
仕上がりをイメージしながら、ひと工夫、ひと手間を余計にかけるという中村さんの料理。
メニュー名だけでは内容は伝わりにくいが、そのぶん、隠れた工夫や意外なおいしさに
出合った時の驚きや感動は大きいかもしれない。


お店におじゃましてみてわかるのは、中村さんは本当に料理が好き、
食べることが好きな人なのだということ。
また、この店に通うお客さんも、食べることが好きで、中村さんと彼の料理に
出会うのを楽しみにしていることが、カウンター越しのやりとりから伝わってくる。
お客さんから「これおいしい。何が入ってるの?」と、言われたときの
中村さんのうれしそうな顔!
作り手と食べ手の距離が密になる、カウンターの魅力を改めて感じた。
